スラリー中の単一粒子評価
微粒子磁化率計
スラリーの分散特性を評価する上で、粒子径分布やゼータ電位、粘性等の評価が一般的ですが、濃厚系スラリーでは、沈降特性及び粒子の表面特性評価等も重要になってきます。
それらに加えて、スラリー中の"単一粒子"の評価を行うことで、下記の図のように、より詳細なスラリー全体の把握が可能になります。
それぞれの関係を理解した上で、各々の分析手法を選択し活用する必要があります。
今回は微粒子磁化率計をご紹介させて頂きます。
「磁化率」から単一粒子毎の濡れ性・粒子組成の均一性を評価
<微粒子磁化率計>
◆測定対象は単一粒子
◆粉体の濡れ性評価・界面評価
◆表面被覆率の評価
◆粒子の組成の均一性の評価
◆磁性体からポリマー、カーボンやシリカなど反磁性体も測定可能。
「磁化率」とは、原子ごとに固有の値を持つ物性値で、粒子はその組成に由来した値となります。また、磁化率を体積で規格化した「体積磁化率」は、粒子の骨格部分と表面修飾部分、溶媒和部分の足し合わせとして表すことができます。
(体積磁化率) =(粒子の骨格部分)+(表面修飾部分)+(溶媒和部分) |
測定原理
粒子の体積磁化率は、電気泳動法で単一粒子毎に測定します。粒子を磁場中に置くと右図の様に磁場中を粒子が泳動します。この時の泳動速度と粒子径から粒子の体積磁化率を求めます。
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粒子の濡れ性評価事例(多孔質シリカゲル粒子)
高速液体クロマトグラフィ用の高純度多孔質シリカゲル粒子の、アセトンとメタノールに対する濡れ性の比較です。 右図から、メタノールの方が体積磁化率のばらつきが小さく、親和性が高いことが分かります。
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負極材カーボンの測定例
負極材用のカーボンを、磁気泳動法にて粒子の体積磁化率を測定した結果です。体積磁化率は、すべての物質が持つ磁性に基づく物性値で、カーボンは反磁性体ですが評価が可能です。 磁化率計では、スラリーとしての粒子と分散媒との相性(濡れ性)を測定することができ、表面修飾の有無や修飾量、吸着量の評価が可能です。 負極材だけでなく正極材の評価も可能な為、電池材料の濡れ性や組成の均一性評価に利用できます。
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粒子の表面被覆率の評価事例(シリカゲル粒子)
シリカゲル粒子の表面を疎水処理などを施すと、被覆率は100%にはならず、未処理のSiOH(シラノール)基が残ります。そこで疎水処理後の残存シラノール基への修飾の影響を体積磁化率で比較しました。
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その結果、右図の様に修飾(エンドキャップ処理)の有無で体積磁化率の分布に違いが見られました。
このように、粒子表面の官能基の違いや表面修飾の有無や表面修飾量も評価する事が可能です。
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