電極スラリー評価の検証実験

概要

電池の電極スラリー等の、重い粒子が入っている黒色の濃厚系スラリーの評価を、X線透過式自然沈降分散安定性評価装置LUMiReader X-rayを用いて検証しましたので、紹介致します。

 

検証項目は下記の2点です。

1. 水にカーボン粒子とSUS(ステンレス)粒子を分散させてSUS粒子の挙動を観察

2. PVdF溶液中にカーボン粒子、バインダー、無機粒子を手攪拌と自転公転ミキサーで分散させた物の比較評価

 

​​水系SUS懸濁液(50wt%)を用いた透過率の比較

水にSUS粒子を懸濁させたサンプルを用いて、可視光(870nm)を用いた装置と、LUMiReader X-rayで得られた透過率プロファイルを比較しました。

X-rayAPP03-11.png

 

写真では少し濁った上澄みができているように見えますが、実際には870nmの光では十分には透過しておらず、堆積層との境界が不明瞭です。一方、X線の透過率の方では堆積層との境界も明瞭に識別できています。

 

​​水系SUS懸濁液(50wt%)にカーボン粒子を添加

先ほどの水系SUS粒子懸濁液(50wt%)にカーボン粒子を添加して光が透過しないようにしたサンプルを用いて、X線透過率の経時変化を測定ました。得られたデータから沈降速度を算出し、カーボン粒子の有無で比較しました。当然ですが、沈降速度及び挙動には、ほとんど差が見られません。

 

 

サンプル名 沈降速度
(μm/秒)

SUS + Water (50wt%)

35.15

SUS + Water + Carbon

35.93

 

X-rayAPP03-02.png

​​PVdF+NMP溶液中無機粒子の沈降挙動

PVdFを溶解させたNMP溶液中の無機粒子の沈降挙動を測定するため、無機粒子(10~15μm):30.0g、PVdF液:13.3g、カーボン粒子:1.6g、NMP:23.8gを混合したスラリーを作成し、X線で評価が出来るかについて検討しました。

 

 

 

 

X-rayAPP03-13.png

 

目視では、沈降挙動を観察することはできませんでしたが、X線透過プロファイルより、沈降している様子を捉えることできました。
 

​​分散方法の違いによる比較(遠心機を組合わせた加速試験)

先ほどの材料を手撹拌で分散した物と自転公転撹拌で分散した物で差があるのかについて比較・検討を行いました。そのX線透過率のプロファイルがこちらとなっております。 

 

 

手撹拌のサンプルは、測定開始の早い段階から沈降が始まっています。自転公転ミキサーを使用した方が手撹拌より沈降速度が遅く、分散安定性が高いことが分かります。

今回測定したサンプルは、比較的分散安定性が高く粒子の沈降に時間が掛かるため、遠心機を用いて加速試験を行いました。

 

​​金粒子の分散測定

こちらは、水に金粒子を分散させたものを測定した結果です。

 

 

LUMiReader X-rayでは、沈殿層の形成挙動を捉えることが可能です。特に着目すべき点として、沈殿層の底の部分と上の部分で透過率に違いがあり、底の部分のほうが透過率が高くなっていることです。

これはおそらく金の粒子径に分布があり、底のほうに大きな粒子が沈降しており、粒子間に隙間があるものと考えられます。一方、沈殿層の上部分は粒子が底よりも密に詰まっている為、透過率が低くなっていると考えられます。

このような沈殿層の高さ方向での透過率の違いは、電極スラリーでは、活物質粒子にカーボンが良く結合しているものと、活物質単体の量比としても捉えられる可能性があると考えられます。

 

結論

まず、水にカーボン粒子とSUS(ステンレス)粒子を分散させたものについて、SUS粒子の挙動を観察したところ、目視で確認できないサンプルでもX線を用いて確認できました。

次に、PVdF溶液中にカーボン粒子、バインダー、無機粒子を加えたスラリーに対して、手攪拌と自転公転ミキサーでの分散性比較評価を実施したところ、無機粒子の沈降挙動から自転公転ミキサーを使用した方が、分散安定性が高いことが分かりました。

これらのことから、LUMiReader X-rayを用いることで、電極スラリーのような無機粒子を含む、目視では確認出来ないようなサンプルでも分散安定性の評価が可能と思われます。

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