白色インクのX線を用いた評価

概要

白色のインクには酸化チタンなど金属が原料として使われている物があります。金属は重いため、分散安定性で重要な要素である沈降速度が高い事が多く見られます。しかし、通常の光学系を用いた計測器では濃度の影響で、それらを計測するのは難しい事が多いです。
今回、遠心沈降式の光学測定装置とX線を用いた自然沈降式の測定装置で、白のインクを各種評価、比較した事例を紹介させて頂きます。

 

​​サンプル

水性で同一メーカーから販売されている同種類で色の違う3つの白系インクを比較しました。

img_xrayAP_sample3.jpg

​​測定

それぞれのサンプルを希釈せずに各装置で、分散安定性評価を行いました。

X線では沈殿層の形成速度を算出しました。

 

​​遠心沈降式プロファイル

遠心式のため、サンプルは横向きに設置されています。その為、左側が液面、右側が底になります。

 ・測定原理の詳細→ 多検体・分散性評価 粒子径分布測定装置 LUMiSizer

 

 

Bのサンプルが一番沈殿層の高さがある事が分かります。おそらく固形分濃度が高いと考えられます。
Cのサンプルは下部(透過率~20%程度)の部分が早く移動し、その他の部分は比較的ゆっくり揃った状態で底方向に移動しているので、粒子径の揃った小さな粒子とそれ以外の大きい粒子があると思われます。
Bのサンプルは水平方向にかなり傾いて移動している為、不揃いで、Aのサンプルは途中まで均一に移動しているため粒子径は揃っていると考えられますが、途中から少し乱れています。

 

​​遠心沈降式解析(沈降速度分布)

下記はプロファイルから解析ソフトを用いて沈降速度の分布を表示した物になります。

img_xrayAP02-1-2.png

 

プロファイルの考察で述べたようにAとCは比較的粒子径が揃っていると考えられます。
Bはかなり分布が広そうです。
Aの後半のプロファイルの乱れは細かい粒子が多数あったためと考えられます。

 

​​X線自然沈降式 沈降挙動

こちらは自然沈降式なので、上がサンプル液面、下が底となっています。

 ・測定原理の詳細→ 自然沈降・X線透過方式 分散性評価装置 LUMiReader X-RAY

 

 

X線でも遠心沈降式と同様にBのサンプルが一番沈殿層の高さがある事が分かります。

 

img_xrayAP02-2.png

遠心沈降式の結果からサンプルAが沈降速度が遅い(分散安定性が高い)ため、遠心機と組合わせ加速試験をした結果になります。遠心沈降式と同様に沈殿層が形成されていることが分かります。

 

​​X線自然沈降式解析結果

上澄形成速度 (単位:mm/day)

A

1.237

B

248.2

C

209.9

 

沈殿層形成速度 (単位:mm/day)

A

-1.042

B

-321.1

C

-170.7

 

こちらも遠心沈降式と同様に上澄形成速度はAのものが他のサンプルに比べて、かなり低い(分散安定性が高い)ことが分かります。
また、X線を使用しているため、沈殿層の挙動も捉えられる為、沈殿層の形成速度も算出しました。
沈殿層の形成速度が上澄形成速度に各々近いことが分かりました。

 

結論

​​​​​​可視光の光学系を用いた遠心沈降式及び、X線を用いた自然沈降式の装置を用いて、濃厚系であるホワイトインクの分散安定性が評価できることが分かった。

インクや電池の電極スラリー、日焼け止めなど今回のような酸化チタン等の金属が入っているような濃厚スラリーの分散性安定性評価にはX線を組合わせた方が、沈殿層の形成過程が把握出来るため有効だと思われます。
双方の結果から、Aのサンプルが最も分散安定性が高くCのサンプルが低いと考えられます。

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